狭小住宅の建築をご検討のみなさま。設計の中で力を入れたい場所はどこですか?
もちろんリビング!うんうん、そうですよね。キッチンも重要。寝室やお風呂も大事なくつろぎの場所だし、家の顔として玄関だってこだわりたい!
…うん、その選択肢の中に階段は出てこないですよね。階段は居場所というより通路という感じ。ましてや小さい家だし、階段にこだわりを入れてる余裕はないない。
でもね…。小さな家だからこそ、階段にもこだわることが大事です。なぜなら。
狭小住宅で階段が占めるスペースは大きい
から。
狭小住宅だろうが広い住宅だろうが、ヒトが生活する上で最低限必要となる機能の最小限スペースは同じです。
最低限必要となる機能、というとこんな感じですかね。
- トイレ
- 浴室
- キッチン
- 階段(平屋を除く)
これらを設置する際には、人が安全に機能的に使用できるための最低限のスペースを必要とします。
家が小さいから小さい便器でいいや、とか、階段なしで上り棒でいいです、とか、そういうわけにはいかないもんね…。
全体の面積が狭くなれば狭くなるほど、これらの占める割合は大きくなり、部屋の一部、というイメージになってきます。
実際に設計の段階になると感じますが、階段が占めるスペースは素人が思っているより多く必要になります。できるだけ無駄を省くことはもちろん、単なる生活に必要な機能としてだけでなく、デザイン的な工夫や他の機能をして居室の延長としても使っていくのが理想的でしょう。
階段を工夫することで有効な空間使いができる
普通の一軒家住宅の場合は、廊下や階段は部屋と部屋を移動するためのもの、という意味合いが強くなると思います。ですが狭小住宅の場合はそもそも廊下を作らない場合も多いですし、部屋に扉もつけず、部屋と廊下がつながっている、という設計にする場合も多いでしょう。
階段もしかり。階段を上ったらすぐに部屋につながる、という場合は、階段を上り下りする人や空気の流れは部屋にも伝わりますし、部屋から視界にはいります。
つまり、階段も部屋みたいなものです。
それは言い過ぎじゃないの…?
いやいや、言い過ぎかもしれませんがそうなるのが理想だと私は思ってますよ。
単なる移動手段としてだけでなく、通風や採光など、狭小住宅に重要な機能を持たせることやちょこっと滞在できるような居心地のよい空間にしておくのがおすすめです。
階段の工夫具体例
螺旋階段
ぐるぐると螺旋状に上っていく最低限の軌道をベースに作る階段。折り返しもなく最もスペースを取らない形状であることがメリット。
階段スペースが円柱状になり、床にも円状の穴が開くので、デザイン的に合う合わないや好みが分かれる設計かと思います。上りやすさとかはどうなんでしょうね…?いっぱい上ると目が回りそう。
あとは最低限のスペースで作ってしまうと大きな荷物の上げ下ろしができないのがデメリットです。一部アクセント的に使用するとよさそうですが、メイン階段にするにはちょっと厳しいのかも…?とも思います。
スケルトン階段
階段の踏板(足をかける部分)や蹴上板(踏板と踏板を繋ぐ垂直の板)を透ける素材(強化ガラスとかパンチングとか)にしたり、一部なくしたりするもの。
光や風を通し、階段の存在を軽く見せることで、空間とのつながりを出す効果があります。
空気の流れやフロアとの一体感が出る分、空調がききづらくなったり、ゴミやほこりが落ちたり、スマホが落ちて割れたりします(笑)
リビング階段
リビングの中に上階に昇る階段を配置する設計。廊下のない間取りや吹き抜け、ロフトを持つリビングと相性がいいです。
上階に行く際は必ずリビングを通ることになるので住人同士のコミュニケーションが良くも悪くも必須になること、ロフトや吹き抜けと併用することで開放的な空間を作れることが特徴です。
収納付き階段
階段のデッドスペースや階段の付近に収納をつけたもの。
階段に収納場所としての機能を付帯させることによって、収納を独立させるよりスペースの節約につながります。
空間や段差の制限があるため、独立した収納よりは使い勝手が悪くなる弱点もあります。
我が家の場合
我が家は南北に長い敷地の三階建てなのですが、床面積を効率的に使うため、建物の北側奥一か所に階段をまとめ「螺旋形状」にし、蹴り上げ板をなくして「スケルトン」に、さらに階段と棚をシームレスにつなげた「収納一体型」に設計してもらいました。
階段の奥が棚となっているのですが、棚と一体化することで居室から見ても階段がほぼ目立たず(っていうか物が目立っている?)、すっきりとした見た目になっていて、なかなか良いなぁと思っています。
蹴り上げ板がないから棚から物を落とすと下まで落ちていくけど。。瓶割ったりとか…。
使い勝手よく空間効果のある階段づくりをしよう
たかが階段、されど階段。
狭小住宅の場合は広い家よりも階段の占める面積・容積が大きく、それだけにいかに有効活用できる設計をするかが重要です。
もちろん毎日上り下りする階段ですから階段としての機能や使いやすさは第一に担保したうえで、プラスアルファの工夫をするとより快適な住まいができますよ。