
狭小地に家を建てようとしています。駐車場を作りたいのですが敷地が狭くてもちゃんと作れるのか不安です…。
一戸建てを建てる際、マイカーを持っていれば敷地内に駐車場をつけたいですよね。でも狭小住宅の場合もそれは可能なのでしょうか?
我が家は敷地面積8.8坪、間口2.5mの土地に狭小住宅を建てましたが、設計の初期段階で駐車場を付ける・付けないで大変悩みました。その経験をもとに今回はお話したいと思います。
狭小住宅でも敷地内駐車場は可能。ただし注意事項あり。


結論から言えば、狭小住宅でも敷地内駐車場は大抵の場合作ることが可能です。
間口2.5mというとても細い土地を購入した我が家ですら、作ること自体はできなくはない、という状態でした。
ただし、狭小住宅で駐車場を作る場合、犠牲にするものやリスクも大きいです。デメリットとなりうることをこの記事で説明しますので、しっかりと把握したうえで作る・作らないを決めることをおすすめします。



ちなみに我が家は検討の末、『駐車場は作らない、マイカーは手放す』という選択をしましたよ!
駐車場を作るために必要なスペース
まず、駐車場を作るためにはどれだけの広さが必要なのでしょうか。国土交通省が出している以下の指針をひとつの基準として考えてよいでしょう。
駐車ますの大きさは、設計対象車両に応じて、下に示す値以上とすることを原則とする。
軽自動車 幅2.0m 奥行3.6m
国土交通省 駐車場設計・施工指針について
小型乗用車 幅2.3m 奥行5.0m
普通乗用車 幅2.5m 奥行6.0m
前提として上にあるスペースが確保できれば、とりあえず駐車場は作れる、と考えてよいでしょう。
ただし、上記はあくまでも最低限必要となるスペースです。
前面道路の幅や人の乗り降りの方法、ドアの開き方向、荷下ろしなどの条件などによってプラスのスペースが必要となることに注意しましょう。
狭小住宅の駐車場はビルトインが第一候補
通常、駐車場と家屋は土地に別々に配置すると思いますが、敷地面積が狭い狭小住宅では、家屋のスペースに駐車場を組み込む「ビルトインガレージ」にすることが多いです。
ビルトインガレージにすることで土地を有効活用できるので、土地をめいっぱい使いたい場合にはおすすめです。
- 屋根があるので車が汚れづらい
- 建物強度が下がりやすい
敷地内に駐車場を作るメリット


駐車場代がかからない
当たり前なのですが、これまで賃貸住宅で駐車場がなかった方、あっても月額料金を払っていた方が多いのではないでしょうか。駐車場代はどんなに安くても数千円はかかりますので、年間万単位、都心であれば数十万単位の節約になります。マイカー所有者にとって駐車場代がかからないというのはとても大きなメリットです。
必要なタイミングですぐ車に乗れる
家の敷地内に車があれば、玄関を出てすぐに車に乗って出かけることができますよね。荷物もすぐに家に入れられて便利です。
マイカーを所有していなければ必要なときにレンタカーを借りなければなりませんし、マイカーを所有していても外の駐車場であれば乗るまでに時間がかかります。朝の急いでいる時間などにはこのわずかな時間が惜しいですよね。
売却の際に有利
一般的な建売一戸建て住宅にはほとんどと言っていいほど1台分の駐車場スペースが付いていますよね。たとえ都心部であってもそうです。これはより多くの人のニーズに対応し、買ってもらいやすくするため。マイカーを持っている人なら駐車場あり・なしで同じような物件があれば、当然ありのほうを選びますよね。
もしもこの先家を売却することがあれば、敷地内駐車場があるほうが早く、高く売れる(値下げしなくてすむ)可能性があります。
外で行う作業がしやすい
狭小住宅では多くの場合庭まで作ることは難しいと思います。その場合にも駐車場があれば、そこを庭代わりに使うこともできるでしょう。
とはいえ、完全な庭ではないのでガーデニングしたりはできませんが、車がないときに簡易的な庭として使うことはできますね。
家具に色を塗ったり、不用品を解体したり、あるいは子供用のプールを置いたり。屋外でしかできないことって意外とありますよね。そんなときには駐車場があると便利だと思います。
駐車場を作るデメリット
建築面積が狭くなる
当然ながら駐車場にした部分は家の敷地にはできません。敷地が限られた狭小住宅建設では少しの面積ですら大切です。ビルトインガレージにすれば2階以上の部分を家として使えますが、1階部分は車の占有部分になってしまいます。
駐車場がたとえ15平米程度としても、15坪(50平米弱)での勝負には結構なインパクト!



敷地30平米弱だった我が家にとってはもはや命取りだった…。
一階が狭くなる
基本的に一階部分の前面は駐車場に取られてしまい、家の一階は駐車場の奥部分だけになってしまいます。玄関も駐車場の奥側となり車があるときは全く見えない、ということもあるでしょう。
ただし防犯上やプライバシーの観点からは逆によさそうですし、一階部分は寒かったり暗かったりで使いづらくもあるため、悪いことばかりとは言い切れないですね。
建物強度を高める必要がある
狭小住宅のビルトインガレージの場合、側面に壁を作らないキャンティレバーの形をとることも多くなります。
キャンティとは、「一端の固定支持のみで片方支持のないもの」のこと。壁や柱がないため狭くても駐車がしやすく、見た目もスタイリッシュですが、重たい2階以上の部分を一端で支えるため、鉄骨など強度のある構造を用いることが必要になります。木造などに比べ費用は高くなることを覚えておきましょう。
狭くて駐車がしづらい
狭小地、特に間口の狭い土地では駐車の難易度が高くなります。敷地の片側ぎりぎりに停めなければならなかったり、何度か切り返す必要があったり。前面道路の交通量が多い場合にはストレスになってしまうかもしれません。
車の乗り降り、荷下ろしの際などにもドアを大きく開くことができず不便なこともありそうです。一人は先に降りてから駐車する、なんてことも…。
狭小住宅の駐車場づくりで後悔しないために


作るなら確実に使える駐車場を作ること
結論から言うと狭小住宅でも駐車場を作ることは十分可能なのですが、それは使い勝手の良い駐車場が作れるということとは異なります。
狭い土地に作る駐車場ですから、うまく設計できなければ十分な余裕がなく、駐車に高度な技術が必要だったり、停めるのに時間がかかってしまうことが予想されます。使い勝手が悪いと結局面倒になってしまい、車を使いたくなくなる、または外に駐車場を借りることになってしまうかもしれません。
車を持っているのだし駐車場はできるなら作りたいところですが、作ったのに使えないとなるのが一番残念なことです。作る場合は駐車や乗り降りに十分なスペースが取れるかを考えて作りましょう。



私の実家の話ですが、せっかく駐車場を付けたのに幅ギリギリ+塀&門扉あり+横入れ+坂ありという超難易度の高い設計になっていたため、運転に慣れた営業職の父ですら使いづらくて結局外に駐車場を借りていました。地方なので安かったけど年間5万円ほどの出費に…。
自家用車を所有する必要性を見直してみるのもアリ
狭小住宅を建てるような立地は比較的公共交通機関の便がよく、これまでマイカーに乗っていた人でも必ずしも必要とは言えない場合も多いでしょう。
マイカーの所有自体もお金がかかるものですし、もしも現時点でそれほど車を使っていない、あったら便利程度の状態であれば、狭小住宅への住み替えを期にマイカーを手放すという選択肢もあると思います。
あまり使わないマイカーの置き場に貴重な狭小地を割いてしまうぐらいなら、思い切って駐車場なしで敷地をめいっぱい活用する家づくりにシフトしたほうが満足度は高いかもしれません。



我が家の敷地では前面道路がバス通りで通行量も多く停めづらそうなこと、マイカー使用頻度は月2~3回ぐらいだったこと、敷地が削られるインパクトが大きかったことなどから、マイカーは手放すことにしました。多少の不便もあるけどこれでよかったと思っているよ。
駐車場の検討は設計初期の重要ポイント。どうするかよく考えて。
狭小住宅では残念ながら広い土地に建てる時のように当たり前に駐車場を作ることはできません。駐車場を作るか作らないか、作る場合は今ある車を十分停められるスペースが作れるか、買い替えが必要かなどを考える必要があります。
駐車場を作る、作らないでその後の建築プランが大きく変わりますので、設計の初期段階で取捨選択を迫られる、第一のハードルとも言えるかもしれません。
自分たちの生活スタイルや今後の可能性をよく考えて駐車場をどうするか検討してくださいね!