住宅建築の設計で外せない間取りのひとつが、キッチンです。
キッチンは言わずもがな料理をする場所ですが、冷蔵庫から食材を出したり、調理器具を取ったり、作業台からコンロまで移動したり、など、人が動いて作業をする場所です。単純にレイアウトできればいいというのではなく、動線やゆとりをきちんと考えなければ使いづらくなってしまいます。
狭小住宅では面積が狭いため避けたほうがいいレイアウトもありますし、限られたスペースで使いやすいキッチンを作るためには工夫が必要です。
我が家もキッチン計画は私自身でレイアウト案を出したりもしていろいろと悩んだ部分ですので、その経験をもとにお話ししますね。
狭小住宅のキッチンで実現が難しいこと
まずはキッチンづくりでボトルネックとなる部分を把握しておきましょう。
狭小住宅全体としての空間づくりの弱点として、以下のようなものがあります。
- 床面積そのものを確保することが難しい
- 空間を壁で仕切ってしまうと狭く見えてしまう
キッチンにおいてもこの基本は同じ。そう考えると
- 独立型キッチンをつくる
- 独立型パントリー(食料品や調理用具のストック場所)をつくる
- L字型、コの字型などのレイアウトを組む
といった、面積を必要としたり空間を仕切ってしまうようなキッチンの作り方はしづらいです。
なにかと物が多いキッチンで十分なスペースが取れないのは難点ですが、工夫次第でコンパクトでも使いやすいキッチンは可能です。以下でそのアイデアをお伝えしていきますね。
狭小住宅のキッチン計画の考え方
スペースと作り方に制限がある、狭小住宅でのキッチンづくり。設計する際にどのようなことを頭に入れておけばいいでしょうか。
おすすめレイアウトはI型かⅡ型
レイアウトで効率的なのは、やはり直線的で無駄のないかたち。デッドスペースができないI型やⅡ型で、希望のスペースや部屋の形状に合わせて選択するのがおすすめです。
長方形や幅の狭い部屋、最小限のスペースならI型で、正方形に近い形、収納力やより広いスペースをとりたければⅡ型がいいと思います。
キッチンと居室を無理なく繋ぐ
狭小住宅では上で述べたようにキッチンを独立させないことが多いです。居室の一部にキッチンが収まっている、といった感じの作りにすることが多いため、居室の雰囲気とちぐはぐにならないようにすることが必要です。
なんというか…、「キッチンキッチンしない感じ」を目指すといいと思います。
キッチン!を主張しがちな代表例は大型である冷蔵庫と食器棚。冷蔵庫の色を厳選したり、食器棚を背の低いものにしたりするのがおすすめです。
ミニマムサイズ、空間の効率化が最優先なのか?
狭いのだからキッチンも最小限のサイズと効率的な配置にするべき、とも考えられますが、あまりストイックに切り詰めてしまうのはおすすめできません。
キッチンは物の出し入れや人の出入りがとても多い場所ですので、多少のゆとりスペースを持たせておかないとすぐに散らかったり作業場所がなくなったりしてしまいます。
また、キッチンを比較的使う方へのアドバイスは、これは嫌だとか、こうしてみたいといった希望があれば、効率を多少犠牲にしても取り入れておいたほうがいいということ。キッチンはリビングなどと違い、後からサイズや配置を簡単に動かすことができないものなので、キッチンを使う度にストレスを感じたり、ああこうしておけばよかったな…と後悔してしまうのは避けておきたいところです。
我が家は狭小のくせに大きい海外製食洗機を入れたり、幅の狭い空間の真ん中にキッチンを配置したりしました。効率的とは言えないですが希望を押し通した感じですが、気に入ってますよ!
狭小住宅では造作キッチンもおすすめ
キッチンといえばまず検討候補に挙がるのがメーカー既製のシステムキッチンですよね。システムキッチンも各社いろいろなタイプのものを打ち出してきており選択肢の幅も広がってきていると思います。ただ、どうしても最大公約数的な考え方で作られるものなので狭小住宅のサイズ感や自分たちのこだわりに合わない場合も多いもの。
キッチン選びに悩んだら、大工さんに作ってもらう造作キッチンも検討してみるのはいかがでしょうか。我が家も造作キッチンにしてもらいましたが、以下の点でよかったなーと思っています。
サイズの微調整が可能
造作の良さはなんといっても自由度の高さですよね。必要な部分を広くとり、不要な部分は狭く、あるいはなくすとサイズ感を自由に変更できるのが特に狭小住宅ではありがたいです。またワークトップの高さやシンクの深さや幅なども自由に決められるので、既成のサイズで不便だったところなどを調整することもできます。
コンセントも自由な場所に付けられるのも便利です!
我が家では通路を確保するためワークトップの奥行きをぎりぎりの57㎝に設定してもらいました。海外製食洗機がなんとか入る最小の奥行。無理してもらいましたがこの数センチが狭小住宅では貴重!
足元をオープンにして軽さと広さを出せる
狭小住宅ではできる限り空間を仕切らず視線が抜けるようにしたい。キッチンでもそれは同じです。
一般的なシステムキッチンは天板下が扉や壁で閉じられたハコ状になっていますよね。そのためアイランドキッチンや対面キッチンであってもキッチンカウンターはどうしてもどっしり重く存在感が出てしまいがちです。
造作キッチンであれば足元を囲わない、透け感のあるつくりにもできるので、軽さと広がりを持たせることができます。
むき出しのシンク下は湿気がこもらないのもいいし、足元にゴミ箱などを入れ込めるので使い勝手もいいですよ。
居室と素材を併せて一体感を出せる
居室部分とキッチンで使っている素材や色味が違うと、分断された感じになってしまうもの。狭小住宅の狭い空間に雰囲気の違うものが混在するとより狭く感じたりごちゃついた印象になりがちです。
造作キッチンであれば居室部分と素材を揃えて空間の一体感を持たせることができるのも強みです。
我が家ではスタイリッシュな雰囲気が出せて使い勝手の良いステンレス素材を使って、キッチンワークトップとダイニングテーブルをひとつづきで作ってもらいました。
コンパクトでも使いやすいキッチンづくりのためのアイデア
限られた空間で使いやすいキッチンづくりをするために、ポイントになりそうなことをまとめてみました。
管理しやすく使いやすい収納を考える
キッチンは調理をする場所であり、コンロ、シンク、調理台から構成されていますが、最も重要なのは収納スペースの作り方だと思っています。
キッチンで調理するには食材や道具がなければはじまりません。買ってきた食材や持っている調理器具などをどこにどう納めるか。スペースの限られた狭小住宅では課題となってきます。
我が家ではできるだけ視界を遮らず、場所をとらず収納するために、以下のような工夫を取り入れました。
- 扉で仕切らずオープン棚にする
- ワークトップ上にオープン吊り棚(メッシュタイプ)をつける
- 調理器具は吊るす・マグネットで貼り付ける
また、見せる収納として、お気に入りの鍋や食器を飾るように配置するのもおすすめですよ。
包丁類を出しておいても問題ない場合はマグネットタイプおすすめです!
調理家電の定位置、使う位置を考える
キッチンで使うものの中で比較的場所を取るものが調理家電。これらを適正に納められるように計画することもかなり重要。
例えば、我が家ではキッチンまわりで使う家電として以下のようなものを所有していました。
- 炊飯器
- 電子レンジ
- ハンドミキサー
- ホットサンドメーカー
- オーブントースター
- 電気ポット
- コーヒーミル
- 生ごみコンポスト
あまり意識していなかったのですが挙げてみるとこれだけたくさんのものがあるんですよね。これらを
- どこにしまうか
- どこで使うか
- どれくらいの頻度で使うか
- 何と何をセットで使うか
をという視点から分類して配置を決めていくといいです。できれば物や人の移動がなるべく少なくて済むような効率的な収納ができると精神的・身体的ストレスが少なくできますよね。
実は我が家はこのあたりを全く考えていなかったため、あらゆる場所に物が散っていて見栄えと効率が悪いのです。。
本当はワークトップ上に物を置きたくないのですが、使用頻度が高いオーブントースターは置きっぱなしになっていますし、ご飯を炊くときには米びつと米とぎ用のボウル、米炊き用の鍋が全部ばらばらのところにあって不便…。
皆さんはぜひ私のような後悔をしないようにしてくださいね!
この機会にキッチン家電の所有を見直すのもありだと思います。我が家は炊飯器を手放し、ごはんは鋳物鍋で炊くようにしました。
キッチンを調理をする場と限定しない
限られたスペースでは、キッチンを調理の場としてだけ考えてしまうのはもったいないですよね。
水や火元がすぐそばで使えるワークスペースとして、調理以外の作業を想定して余裕を持った広さをとったり、座って作業ができるような形式にしたりするのもおすすめです。
小さな飲食店のレイアウトを参考にしてみる
狭い中にどうやって効率的なキッチンを作ったらいい?そう悩んだらモデルハウスやショールーム以外に小規模な飲食店に目を向けてみてください。
10坪以下、10席程度の狭めの店舗がおすすめ。たとえば最近流行りのカウンターメインのダイニングバーやコーヒースタンドに行ってみてください。限られたスペースの中で効率的に調理やサービスができる動線や収納の工夫が詰まっているはずです。
客席側から見えてもかっこいい、機能的かつスタイリッシュなキッチンが家づくりのお手本になりますよ。
限られたスペースでも使いやすく楽しいキッチンが可能
スペース自体は狭くても、レイアウトや見せ方、配置の工夫などでいくらでも解放感があって使いやすいキッチンづくりは可能です。
自分たちの生活スタイルやキッチンの使い方をしっかり考えて、どのような形が適しているかを見極めることが重要。ショールームに並ぶシステムキッチンはおしゃれで思わずテンションがあがってしまいますが、住宅空間に持ち込んだときのサイズ感や使い勝手、親和性も考慮する必要があります。
より狭小空間にフィットするキッチンを考えたいなら造作キッチンも視野に入れて考えてみることをおすすめします。
生活の中で向かう時間が多いキッチン、後悔のないお気に入りの場所にしてくださいね!