狭小住宅を建てたら後悔するんじゃないかな…。実際に住んでいる人の声を聴きたい!
そんなあなたへ。私は狭小住宅を建てて引っ越ししてから10年が経過しました。住んでみて違和感はあったのか、実際やっぱり不便か、建てて後悔している?など、これから狭小住宅を建てることを検討している、また建てる予定だけれどなんだか不安だ…、そんな方に率直な感想をお伝えしたいと思います!
満足7割、不満3割。総合的には後悔なく楽しい暮らし
こんなところでしょうか。やっぱり狭小住宅はそれなりに大変なこともありますが、それで後悔しているかというとそれは全くないです。むしろ快適で楽しい。それは以下のような理由からだと思います。
後悔がないのは好みやライフスタイルを設計に反映したから
我が家は建築家に設計を依頼して建てた狭小住宅ですが、自分たちの好みのテイストや空間的な効果もしっかり取り入れて設計してもらいました。
建築家に依頼したことや、鉄骨造にしたこと、そのほかにもこだわりを詰め込んだことで土地や住宅の広さに対する金額としては正直なところかなりかかってしまっています(それでも東京都23区内に家を建てる予算としては大きく超えているわけではありませんが)。
ですが、特にコロナ禍を経て、家にいる時間がぐっと増えたときに、いつも見ている空間が自分にとっていまいちだったら大変ストレスがたまっただろうな、そこはお金をかけても気に入る空間にしておいてよかったなと思っています。
狭小住宅に引っ越して気づいたこと
少なくとも自分たちが暮らしていくのにそれほど多くのスペースやものは必要ない、ということがわかりました。
気付けば人間2人と猫3匹が全員四畳半ぐらいのワンスペースに集まっていたり(狭いとはいえそこに集中しなくても…)、持っている荷物がすべて可視化されたら実は使っていないものばかりだということが判明したり。
起きて半畳寝て一畳、とはなかなかいきませんが、いざ住んでみればああ狭小と言われる住宅で十分だなという感想を持ちました。
【不満3割の内訳】特殊な構造がネックに。不便や不具合は覚悟を
建物的に無理をした部分、デザインを優先したことによる不具合発生、修繕が必要に
我が家の敷地は幅が狭く奥行きが長いうなぎの寝床状。細長くしかも高い建物を建てたことにより、どうしても揺れによる負荷がかかっています。
また、シンプルで美しい見た目や採光を目指したために犠牲にしてしまったものもいくつかあるようです。
- 横が短く縦に長く、高さがある建物で揺れで負担がかかり、内壁塗装の割れや剥がれが発生。
- 風呂場壁をFRPより見た目優先でモルタル塗装にして割れが発生。
- 庇がないスチールサッシで激しい雨により雨漏りが発生。
- 天窓コーキング劣化により雨漏りが発生。
など。あらかじめ聞いていた弱点もあり、よく調べていなくて知らなかった弱点もあり。不具合が出てしまうと単純に不便ですし、それを改善するために設計士や工務店とスケジュール調整したり、原因を追究したり、瑕疵か改善要望か確認したり見積もりもらったり調整したり…。不具合対応に精神的にも時間的にも負担がかかってしまっています。
仕切りがどこにもないため空調効率が悪い
狭い空間をできるだけ閉塞感がなく広く見せるため、扉を付けずスキップフロアで空間を分け、その階層の間にも仕切りはありません。外から取り入れる空気を循環させることが得意なつくりですが、その分留めておきたい空気も他の場所に流れていってしまいます。暖房で温めた空気もスイッチを切るとあっという間に逃げて行ってしまうので、ずっとつけていることが多く、あまり省エネにはなっていないです。
車がないので気軽に遠出できない
我が家はマイカーを所有していましたが、敷地が狭く総合的に判断した結果駐車場をつけずマイカーも手放す決断をしました。もともとあまり車を使う生活ではなかったので後悔はしていませんが、車でないと不便な場所に気軽に行くなどの行動はできなくなったのは少し寂しくはあります。
【満足7割の内訳】とにかく立地の便利さがダントツ
立地がとにかく便利!
我が家の立地は東京都23区内、山手線の外側へ少し行ったところですが、我が家のある場所はこんな感じで、これがすごく便利!
- 最寄り駅まで徒歩8分。JR山手線、私鉄2線、都営地下鉄1駅、東京メトロ2線の駅まで徒歩圏内。
- 徒歩、自転車で行ける範囲内に繁華街がある。
- スーパーが生活圏内に複数件ある。
私は本屋や美術館に行くのが趣味なのですが、都心にある場所ならだいたい1時間弱で到着できるので、どこに行くにも気軽にさっと行けるようになりました。
複数路線にアクセスできる場所なので、目的地によって行く駅を変えることでルートの最適化もできています。
コロナ全盛期でも都心に自転車でアクセスできたのはありがたかった!
スペースの無駄がなくなりストレスから解放
狭小住宅を建てる以前に一般的なファミリータイプの分譲マンションに住んでいたことがあります。3LDKという間取りでしたが、私は1日中リビングにいて、食事も仕事も趣味もずっと同じ場所でやっているような生活で、せっかくある他の部屋はほとんど使わない状態。あらかじめ決められた部屋の役割をうまく活用できていなかった気がします。
狭小住宅にすることで一般的な住宅にある部屋の機能を捨てたり、複数の機能をひとつの部屋に集約したところ、結果的に使わない部屋があるというストレスから解放されました。また自分が普段よく滞在する部屋を居心地よく使いやすくすることで、前よりも暮らしの満足度は上がった気がします。
今でもよく取材などで「このスペースの役割を紹介してください」とか「この部屋は何をするときに使っていますか?」とか聞かれるんですけど、「なんでもしているし何のための部屋ということはない」んですよね。本当は。火元水元は固定されるので便宜的に食事場所なども決まってきていますが、本当はあまり固定概念を持ちたくないと思っています。
そういう感覚を持っている人間には、狭小住宅住まいというのは相性が良いような気がしています。
すべてがワンルームのような一体感と解放感
扉や仕切りを作らなかったことによるデメリットを先ほど挙げましたが、逆にこのデメリットがメリットになっていることもあります。それはすべてのスペースに同じ空気感が流れていることです。
我が家では現在、1階趣味室、2階リビング、3階水回りと寝室、というような役回りで部屋を使っていますが(季節によって変動あります)、そのすべての空間に仕切りや扉がないため、室温や気配も同じような感じになっています。
伝わりますかね?この感じ…。
暖かいリビングから扉を開けて一歩出たときの寒さとか、寝室をあらかじめ暖房で温めておかなければならない感じとか、そういうものがなく、またどの場所にいてもつながっている感覚で寂しくない。狭いからこその独特な安心感があるんです。
狭小住宅で後悔しないためにやっておくべきこと
このように狭小住宅には想定外がつきもの。ともすると「こんなはずじゃなかった…」と思って後悔してしまいがちですが、そうしないためには以下のようなことに気を付けておくといいですよ。
これがいちばん大切!最優先事項を明確にしておく
家を建てる際に一番重視する項目はなんですか?「立地」?「低価格」?「デザイン」? ほかにもあるかもしれません。
- とにかくローコストで家を建てたい
- 都心・駅近に住みたい
- 自分の思い通りに設計したい
などなど。当初「これだけは絶対!」と思っていたものも、物件や設計を見ていくうちに決心や思いがゆらいでいきがちです。まぁ、これでもいいのかも…なんていう気持ちで妥協してしまうと後から後悔することになりかねません。
自分たちの一番をしっかり決めてそれだけはぶらさないようにすると、ほかで妥協したり不満な点があったとしても後悔という最悪の結果にはならないと思います。
狭小住宅は設計が重要!
狭小住宅では一般的な住宅に備わる機能のすべてを盛り込むことはできませんし、そうしてしまうとすごく中途半端な家になってしまいます。
自分たちに不要な部分をそぎ落とし、必要な部分にフォーカスする、メリハリのある設計が必要です。
自分たちの生活スタイルはどのようなものであるか、家ではどこにいて何をしている時間が多いか、何をしている時間が楽しいか、リラックスできるかなどをしっかり考えて言語化し、設計に落としめるようにしましょう。
土地だけはあとから変更不可能。迷ったときは立地がニーズに合っているほうを選ぶ
複数の土地の候補の中で、どこにしようか迷うこともあると思います。そんな時には、立地にマイナス面がなくプラス面が多く感じられる土地を選ぶと間違いがないです。
建物自体のことや内部のことは、設計中や住んだあとでも多少工夫もできますが、外部環境や立地条件は自分たちの力で変えることはできません。
駅近ですごくいいけど線路沿いで音と揺れが不安とか、高台で見晴らしがいいけど毎日通勤で坂道を上り下りが心配とか、娘の学校からの帰宅路が暗すぎるとか。
人によって条件は違いますが、自分たちにとって不安要素がある立地の土地は選ばないようにすべきです。
消去法で狭小住宅を選ばない、マイナス面が気になりすぎるなら考え直す
こんな小さな家に住むのは恥ずかしい、狭小住宅なんて住みたくないけどお金がないから仕方ない。。
そんな風に建築前から考えてしまうようなら、やめておいたほうがいいと思います。最初からマイナスの気持ちしかないのであれば、何か嫌なことや面倒なことが起きたときに「やっぱり辞めておけばよかった」と後悔してしまうことになるでしょう。
すごく嫌だったけど、住んでみたら意外と良かった…!
もしかしたらそんな風になる可能性もあるのかもしれません。でも、そうならない場合誰も責任はとってくれませんよ。
狭小住宅暮らしで後悔しないための心構え
狭小住宅はアイディアや考え方次第でとても便利で豊かな暮らしができますが、狭いことで起こりうるトラブルや苦労も少なからずあります。
そんな時に、以下のような心を持ち合わせていれば、トラブルや想定外を乗り越えつつきっと楽しく暮らせると思います。
- 周りの声や噂に流されない意志
- 常識やひとつのことに固執しない柔軟性
- トラブルがあったときの対応力、粘り強さ
- 何があっても楽しめる前向きさ
個人的には、狭小住宅は住み手のカラーや個性が色濃く反映されるとても楽しい住宅だと思います。逆境を逆手にとって楽しく暮らす、そんな仲間が増えるといいなぁと思っていますよ。